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正しさ

正しさというものの基準は、その人の基準であることが多いですが、自分で正しいと思っているので、一般的には頑固で融通の利かない、生真面目な性格の人が多いでしょうし、どうしてもその「正しい」と思っている人のその価値観を知らず知らず相手に押し付けている場合があります。
でも、自分では正しい事をしていると思っているので、常に間違っているのは相手で、自分が正しいと思っています。
確かに、いわゆる「正論」と言われる、一般常識に基づくようなことがあります。
たとえば、不倫はいけないとか、家事や育児は妻だけの義務ではないとか・・・他にもたばこは健康によくないからできるだけ辞めた方がいいとか、ギャンブルははまってはダメとか・・・

どれも、「正しい」とは思います。絶対に間違いではありません。

ところが、実際にはそう正しいことばかりで縛られたら人間というのは窮屈で、余計に反発したり、逃げ場がなくなって、ダメダメと言われれば余計にしたくなる・・・という心理があります。

夫の浮気などで鑑定に来られる奥さんのほとんどがこの「正しい」タイプなのです。
真面目できっちりしているし、家事も育児もある意味完璧にこなし、礼儀正しく、非のうちどころのないタイプが多いのです。ただ、そういうタイプの人は、自分が正しいので、その正しさで相手を追い込んでいることに気づいていない人がほとんどですから必ず「なぜ、自分が裏切られなきゃいけないのか」と言います。
確かにそうでしょう。やるべきことをしっかりやっているし、家庭を真面目に守っているのに、夫は他の女性と・・・
許せないと言う気持ちも理解できます。

ところが、こういう「正しい」人と一緒に四六時中生活をしていると考えてみましょう。
家庭というのはある意味くつろぐ場所ですから、「いい加減さ」を許される場所なのです。
なのに、何と言うか、先生とか風紀委員と一緒に生活しているようなものですから、息を抜く暇がなく、「窮屈」のひとことに尽きるでしょう。
縛られるというか、監視されているような気分になって、楽しいわけがありません。

学校でも人気のある先生は「正しい」先生よりも「おもしろい」とか「ユニーク」など人間味のある先生です。

「正しさ」には相手を追い込むという危険性があり、そこに本人が気付かないという「間違い」があります。

先日も、育児も家事もして、フルタイムで仕事もしている奥さんが、ご主人が何も家の事を手伝ってくれないと嘆いていて、イライラしてしまうという相談を受けました。
こういう奥さんに限って、自分で全部やってしまうから余計にいけないのです。
「もう無理~」と投げてしまうことは、正しくないと思っているのでできません。
ご主人にしてみれば、出る幕がないわけですし、奥さんの方がすべてにおいて手慣れているため、ご主人は自分がダメ人間のように感じてどんどん自信を失っていくでしょう。

そんな時、いい加減な(と言うと語弊はありますが)女性と出会えばホッとします。
彼のありのままを観ても何にも叱咤激励されることなく、放置してくれます。
だから、浮気のメカニズムとは不思議で、明らかに間違っていない奥さんが裏切られるという「正しくないこと」が起こるのです。

この手の奥さんには「いい加減さ」を勧めても、なかなか理解してもらえません。
いい加減さ=正しくないので、許せないのです。
でも、変な話、一度も嘘をついた事がない人とか、一度も信号無視をしたことのない人など、世の中にいるでしょうか?完全無欠の正しい人なんていたらもう、息苦しくて仕方がありません。
人間はどこかで緩める部分がなかったら、やっぱり生きていけないでしょう。

「じゃあ、夫が浮気したのは私のせいなんでしょうか」とこの手の奥さんは言います。
「全てがそうではないけれど、正しいことが必ずしも通用しないのが人間関係で、だからこそ楽なんです」と答えます。そして奥さんにも、「もし、あなたのすることなすことにいちいち間違っているとか正しいとか、先生みたいにご主人に言われたらどんな気持ちになりますか?」と尋ねると、初めて相手の気持ちに気づくようで、「あなただって、時には家事の手抜きをしたいときもあるでしょう?」と聞くと、「そんなことはありません」と。
「でも、適当でいいよ、とご主人が言ってくれたら楽じゃないですか?」というと「まあ、たまには外食とかもいいかも」とようやく柔らかくなります。
「そう、そのやわらかさ、柔軟さがあなたには足りないから、いつのまにかご主人を追い込んでいたんですよ。」

以前にも、夜中に飲んだくれてご主人が帰ってきても寝ないで待っていて、帰ったらお茶漬けなどを笑って用意する奥さんがいましたが、そんな奥さんはご主人にはまるで拷問を受けている気分になります。
もう、高いびきで寝ていてくれる奥さんの方がずっと楽でしょう。飲んだくれているということは、仕事ではありませんから、ご主人は「正しくない」わけです。そんな時に奥さんに「正しい」対応をされたら怖いですよね。
このご主人もしっかり浮気常習犯で、奥さんはもう、「離婚です!」と叫んでいましたが、ものすごく豪快だし、面白いご主人なのです。この奥さん、ご主人に「お前も友達と飲みに行けよ」と言われているのにいつも「子どもを置いて行けない」とか(中高生です)頑なだったのですが、ご主人としては、奥さんが適度に不良主婦をしてくれている方が楽なのでそう誘導したのですが・・・。

うまく行っている夫婦の多くは、どちらもが自分の世界を持っていて、介入しません。
でも、根底に信頼関係があってこそできることなので、お互いに夫婦といえども距離感を保っています。

私自身も地の星座ばかり過剰なのでどうしても「正しさ」で人を追い込む傾向がないとも言えず、じゃあ自分はどうなんだと言えば結構ルーズなのに、相手にばかり正しさを求めてしまうところがあります。

子どもでも同じで、禁止令を出しすぎるとかえって反発を食らうものです。
私も、次女には良くこの手の反発を食らいました。

やはり何事も「いい(匙)加減」というのは、人間関係をスムースに運ぶ秘訣なんでしょうね。

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